展示について
ちょっと意外だったのですが、管理人自身が色々な人と話をしてみると、写真を撮る人の中には額装を軽視している人もいるように感じました。 これはおそらく、「自分は展示の専門家ではなく撮影の専門家だ」という自負もあるかと思いますし、写真というメディアが、単体で展示するという事が少なく、雑誌に掲載されたり広告媒体として提示されることが多いのも原因かと思います。
しかし御苗場では、一定の展示スペース内に写真が物理的価値を持った作品として展示され、鑑賞条件をある程度コントロールできるという特徴があります。 特に額装は、作品をどのような心理状態で見て欲しいのか、作品を浮き出させたいのか、奥に沈めたいのかなど、心理的・視覚的な鑑賞条件をコントロールできます。 作品の魅力を最大化するためには、写真の配置はもちろんですが、作品に合った額装も重要な要素だと思います。
ここでは、代表的な展示方法と額装の種類について書いていこうと思います。額装は、これ以外にも多種多様な方法があり、専門的な知識や専用の機材を要します。 (額装だけで会社が成り立つほどです!) もし、額装屋さんが近くにあれば足を運んで相談したり、インターネットで検索するのが良いかと思います。 個人的には、予算などの条件があるかと思いますが、自分でやるより専門の業者に頼んだ方が最終的な仕上がりも綺麗だし、コンセプト造りや撮影などに集中できるのでお勧めです。
用紙選択やプリントにも言えることですが、展示方法は「絶対こっちの方が良い」という事はなく、「この作品ならこの方法が良い」というように、作品ごとに最適な方法があるだけだと思います。 高価な展示方法だからと言って作品の魅力が最大化されるわけでは無いことに注意を払う必要があります。
展示の具体的手順については「展示の手順」を、必要な道具については「持っていく物」が参考になると思います。
配置について
作品の配置は、基本的には英文と同じ方向(左上から右下へ、横書きの方向)で鑑賞されるのを前提とするのがよいと思います。 その他、縦方向に鑑賞したり下から鑑賞するなど特別な方向で鑑賞してもらいたい場合には、それなりに作品の配置や間隔を工夫する必要があります。
基本の配置はグリッド配置(グリッドレイアウト)です。展示スペースを水平線と垂直線でマス目状に分け、そのマス目に従って作品を配置していく方法です。
その他の配置としては同心円状に配置したり、斜めに配置したり、バラバラに配置する方法など、多岐にわたります。 グリッド配置以外の配置方法は目を引きそうですが、実際は写真を鑑賞する順番が分かりにくかったり、配置に気を取られて写真の内容自体を集中して鑑賞できなかったりして、あまりきちんと写真を見てもらえない場合もあります。 (高い評価を受けたり賞を取っている作家さんにも、グリッド配置の展示が多く含まれる理由を良く考える必要があります。)
以上のような理由から、グリッド配置以外の配置方法を採用する場合は、コンセプトと照らし合わせた上で慎重に検討した方が良いように思います。 ただし、これはグリッド配置以外を否定するものではありません。 コンセプトに合致し、工夫のある、よく考えられた配置であれば、どのような配置でも作品の魅力やコンセプトを非常に効果的に伝えることができるからです。
パネル貼り(スチレンボード)
耐久性はないですが、安価で一般的な展示方法です。染料系インクジェットプリントに向いています。
方法 |
・市販の糊付きスチレンボードに写真を貼り付ける。 |
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長所 |
・作品全体の重量が軽い。 ・安価に制作できる。 ・耐水性のないインクジェットプリントでも制作可能。 ・作品がむき出しなので、紙の質感を活かすことが出来る。 |
短所 |
・耐久性が低いため破損しやすい。(落としたり、ちょっと力がかかっただけですぐに歪んだり凹んだりする。) ・平面性が低く温度変化や湿気によって反る。大きな作品ほど反りやすい。 ・A3以上の大きな作品の場合、パネルとの間に気泡が入りやすくなるなど制作が難しくなる。 ・特に光沢のある作品の場合は反りや気泡が目立ちやすい。 ・作品がむき出しなので、汚れたり傷がついたりするリスクがある。 |
固定方法 |
・細いピンか小さなクギをスチレンボード断面に斜めから刺すか、壁に対して垂直にピンを刺して引っかけて固定する。 |
その他備考 |
・安価だけど綺麗に作るのは難しい。おまけに輸送や展示作業で破損しやすいし、湿気や温度変化があれば反ってしまう。でも安価。 ・裏側に市販の木枠を木工ボンドで貼り付けて、パネル貼り(木枠)や水張りと同様の固定方法で壁に掛けると作品を壁から浮かすことができる。 (木枠は、ヨドバシカメラで売っている「西田木工所 木製パネル」が安くて使いやすい。) ・スチレンボードは、発泡率が低く、厚さがあって、両面に上質紙が貼ってあるものが反りにくい。 ・長辺が50cm以上の大きな作品には向かないかも・・・。 |
水張り
こちらも割と安価で一般的な展示方法です。管理人お勧め。銀写真プリントをはじめ耐水性のあるプリントに向いています。耐久性もそこそこあります。
方法 |
・耐水性のある作品と木枠(木製パネル)、水張りテープを用意する。 ・作品の裏にハケで均等に水を塗る。 ・作品を伸ばしながら木枠に固定して、四方をステープラで固定する。 ・周りを水張りテープで止める。 |
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長所 |
・乾くと縮む紙の性質を利用して、ぴったりと写真を張ることができる。(平面性が高い。) ・比較的安価に制作できる。 ・大きなサイズの作品でも制作する事が出来る。 ・作品がむき出しなので、紙の質感を活かすことが出来る。 |
短所 |
・水を使うので、耐水性のあるプリントにしか使えない。 ・作品の上下左右は木枠側面に織り込むので少し切れてしまう。 ・作品がむき出しなので、汚れたり傷がついたりするリスクがある。 |
固定方法 |
・壁にクギを打って、木枠の掛け溝に掛ける。 |
その他備考 |
・額装に比べると安価で、かつ綺麗に作るのも慣れれば簡単、輸送や展示作業でも比較的破損しにくい。ただし作品がむき出しなので、当然表面には傷が入りやすい。 ・粗悪な木枠は、水が乾いたときに反ってしまうので注意。合板を使ったものや補強材が入った木製パネルが反りにくい。 ・木枠に固定するときには、ステープラを使わずにいきなり水張りテープを使うこともある。 ・次の動画は水彩画などに用いる画用紙を水張りする様子だが、具体的な作業手順の参考になると考えられる。 → YouTube - 水張りの仕方 http://www.youtube.com/watch?v=w18v-yTrcD4 ・その他、水張りについてはインターネットで検索すると色々な情報や注意点を調べることができる。また、写真学校や写真教室の先生に方法を聞くのも良い。 |
額装
高価ですが作品の魅力を引き出す展示方法です。
方法 |
・作品を額に入れて展示する。 ・視覚的な展示条件を調整したいときや、作品の大きさと額が合わないときはマットを使う。 ・作品の平面性を保つためには、裏打ちシートやバックシートによる裏打ちを行う。(光沢のある作品の場合、裏打ちは非常に重要。) ・額については、(1)市販のものを使う (2)専門業者に発注して特別なものを制作する (3)自作する という3つの選択肢がある。 |
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長所 |
・耐久性が高い。 ・どのような大きさの作品にも対応できる。 ・作品を保護することができる。 |
短所 |
・高価。 ・ガラスを使った額装の場合は落下の際に大事故になる可能性がある。(ガラス禁止の展示会などもあるので事前に確認が必要。) ・作品を保護するためのガラスやアクリルが、作品の魅力を損なうことがある。 ・作品が重くなるため、しっかりとした固定方法が必要になる。 |
固定方法 |
・壁にクギを打ち込み、止めヒモに掛けるか、石膏ボード専用のフックに掛ける。 クギの場合は抜けないように背面のベニヤ板の途中まで打ち込む必要がある。 (クギがベニヤ板を貫通してしまうと逆に抜けやすくなるので注意) |
その他備考 |
・作品の価値を高める最も一般的な方法。でも高価。 ・作品を保護できるが、保護のためのガラスやアクリルの反射をいやがる鑑賞者は意外と多い。 額にセットするときにガラス(アクリル)を裏板の前に持ってくるか、厚紙などで厚さを調整すると作品をむき出しにできる。 ・額装は額の種類から始まり、作品の固定方法など多種多様な方法があり、奥の深い分野。 残念ながらインターネット上には情報が少ないので、写真学校や写真教室の先生に聞いたり、額装屋さんに足を運んで相談するのが良いかも。 ・基本的な額装の知識がないと逆に安っぽくなるので、専門の業者に頼むか自分でよく勉強する必要がある。 |
その他の展示形式
その他、次のような展示方法が挙げられます。 御苗場では各作家さんが工夫を凝らした展示を行っています。展示方法を考えるのは楽しみのひとつでもあります。
・アクリルマウント(特殊な方法で写真とアクリルを圧着したもの) ・アクリル板で挟んで固定(専用フレームが市販されています) ・壁に直接ピンで止める(作品が傷みますがコンセプト次第で選択肢に入れても良いかも?) ・壁に糸を張って、クリップで作品を吊るす ・それ以外にもあるかも・・・? |